60歳代以上の、シニア世代の経営者が抱える大きな悩みの一つが「年金」です。
年金受給開始年齢になっても会社から高額の報酬をもらい続けている人は、厚生年金がカットされ、支給されなくなってしまいます。
これまで何十年もの間、高額な厚生年金保険料を払い続けてきたのに、役員報酬が高いという理由だけで年金が1円ももらえない……
なんだか、理不尽な印象を受けてしまいませんか?
しかも、「年金の支給停止の仕組みは所得制限ではない」ということも、火に油を注ぐ原因になっています。
たとえば、厚生年金の被保険者でない人なら、家賃収入などが年収1000万円以上あったとしても年金は満額もらえてしまいます。
年金という制度に限って言えば、「会社の社長だけが割を食っている」といってもおかしくない状況です。
一般企業のサラリーマンが定年退職していく中、自分は65歳を過ぎても日々会社の経営と向き合い、社員のため、社会のために頑張っているはずなのに、なぜか年金はもらえない。
これって、本当におかしいと思いませんか?
正直、「怒り」に近い感情を抱いてしまう方もいらっしゃることでしょう。
おそらくこの本を手にとられた方は、こうした事態にすでに直面されているシニア世代の社長か、または何年後かに直面される年金予備軍の社長がほとんどではないかと思います。
こんにちは。私は社会保険労務士の大西英樹と申します。
私は「企業高齢化対策協会」という一般社団法人の代表理事として、冒頭のような悩みを抱える多くの社長の悩みを解決し、年金を復活させてきました。
また、年金復活を通して会社により多くのお金を残すための施策を中心に、社長や従業員の高齢化に対するさまざまな支援を行なっています。
さて、社長としては年金をもらいたいと思うのは当然の話ですが、その前に多くの社長が、そもそも年金の仕組みについて詳しいわけではありません。
そもそもの話として、「自分の年金はいったいどうなっているのか?」、そして、「なんで自分の年金がもらえないのか?」ということが知りたいのです。
なぜなら、このことを経営者にきちんと説明をしてくれる人が誰もいないからです。
たしかに、一般論として「在職老齢年金」などの年金がカットされる仕組みを説明する人はいるかもしれません(この制度については本書の中でも説明します)。
でも、「『あなたの場合には』こうなっています」と、それぞれの状況について個別・具体的に説明をしてくれる人は、残念ながらほとんどいません。
さらに、シニア世代の社長の多くは複数の法人を持っており、それぞれから役員報酬を得ています。これが話をさらに複雑化させています。
複雑になればなるほど理解できない人も増えてきて、「どうせ年金はもらえないんだ……」と、諦めていきます。
でも、あきらめないでください!
たとえ高額の役員報酬をもらっていても、また複数の会社を経営していたとしても、きちんと取り組めば社長の年金は復活します。
せっかく払い続けた厚生年金保険料を無駄にしないため、
しっかりとした役員報酬をもらいながらやりがいのある経営を続けるため、
そして、あなたの会社により多くお金を残して会社をさらに発展させるため、
ぜひ、年金復活に取り組んでみてほしいのです。
この本では、複雑な制度の説明はできるだけ避け、基本的な仕組みの解説を中心に行ないました。
もしあなたが本格的に年金復活に取り組まれるのであれば、最終的には年金復活の専門家へ相談することをお勧めしています。
ですが、この本に書いてあるような内容を事前に把握しておけば、年金に関する相談がスムーズになることはもちろん、「この専門家はほんとうに自分の期待に応えてくれるだろうか?」という判断をすることができるようになります。
そのためのガイドブックとして、本書をご利用いただければ幸いです。
それでは、私と一緒に「社長の年金を復活させる方法に」ついて、一緒に勉強していきましょう。
(「はじめに」より)